週末は第39回日本眼科手術学会学術総会に出席のため博多へ。今回の学会での収穫のいくつかをご紹介します。
まず、Ologen® Collagen Matrix(Ⅰ型コラーゲンとグリコサミノグリカンからなる移植用細胞外基質類似素材)による緑内障濾過手術合併症対策。
通常の緑内障濾過手術では、マイトマイシンC(MMC:抗癌剤の1種)を併用することで強膜flapおよび結膜下組織の癒着を防ぎますが、過度の癒着抑止により眼圧が低くなりすぎたり(過剰濾過)、結膜が菲薄化し感染(濾過胞感染)を生じたりする場合があります。緑内障手術時にOlogenを濾過胞内に挿入すればMMCに匹敵する高い瘢痕抑止効果があることが近年海外から報告され、本学会では日本人における同効果の症例報告がなされました。
(写真は製造元であるAeon Astron社のHPからの引用)
単純なMMC代用のみならず、過剰濾過症例への追加挿入による術後低眼圧の改善、術後結膜部分欠失に対する被覆効果の増強など、様々なメリットが報告されていました。pilot studyですが、将来性の高い手術補助剤であることは間違いありません。
招待講演はノーベル物理学賞受賞者の中村修二先生による「青色LEDの開発とその後」と題した講演。裏話は面白かったですが、ほとんど漫談でした…(^^;)。
感慨深かったのはiPS細胞による網膜再生医療。加齢黄斑変性患者の自家iPS細胞からの網膜色素上皮細胞シート移植手術についての、実際の執刀医による講演でした。抗VEGF療法など他の治療が無効な症例に対する最後の手段。世界初のiPS細胞治療でもある第一例目の術後経過は良好で、患者さんも満足されているとのこと。
しかしまだ1例しか行われていない….様々な倫理的ハードルがあるということでしょうね。政治的ハードルもあったりなかったり…のようですが、せっかく眼科がiPS細胞の臨床応用の先導指揮をとったのですから、他科に追い抜かされないよう、症例の集積が期待されます。
そして夜は、会場に隣接の福岡サンパレスにて、なんとスターダストレビューのコンサート!
えっ?何故?…学会に事前登録すると、希望者にはチケットが無料で付いてくるという、よくわからない仕組みでした。おそらく赤字と考えますが、総会長による見事なおもてなし、なのでしょう。
Vocalの根本要さんは天才ですね!巧みな話術に完全に乗せられ、1,500席の全眼科医がstanding。かなりご高齢の眼科医もいらして、明日大丈夫かと余計な心配を…
ミニコンサートという触れ込みでしたが、たっぷり2時間、歴としたコンサートでした。
そして涙腺がゆるんだまま、医局の後輩達と中州へ。
今週は水曜に準緊急の硝子体茎離断術(裂孔原性網膜剥離)。木曜はエキシマレーザー手術。金曜は水晶体再建術と硝子体茎離断術(増殖糖尿病網膜症)。
明日から4日連続の手術、頑張ります!