第41回眼科手術学会総会にて興味深かったEDOF IOLのセッションについて。
EDOF(Extended Depth of Focus)IOLの代表であるTecnis Symfony(シンフォニー、AMO社、国内承認済)は、遠方から中間(眼前50〜60cm)にかけての幅広い範囲に焦点が合うように設計されているレンズであり、従来の単焦点眼内レンズとほぼ同等の高いコントラスト感度が得られます。軽度の乱視であれば乱視矯正なしでも裸眼視力は良好であり、また夜間にグレア・ハロなどの症状を自覚することもほとんどありません。良好なコントラスト感度・夜間視力(ハロ・グレアの改善)により、当院においても高い患者満足度が得られています。
EDOF IOLについては多くの方が興味を持たれているようで、セッション会場はほぼ満席。
座長から演者への正すべき指摘、そして会場でも活発な意見交換がなされていました。
・ コントラスト感度が良好であり、度数ズレに強いことから、レーシック術後眼の白内障に対しては、多焦点IOL挿入術の第1選択となりうる。
・ 回折型二焦点IOL挿入術後の不満足症例(waxy・グレア・ハロなど)においては、これまでは単焦点IOLへの入れ替えを行うのが通例。しかし二焦点からEDOFへの入れ替えを行い、視力も含め自覚的に著明な改善が認められたとの症例報告。今後はこれが主流となり得るかも。
そして最近、従来の回折型や屈折型と全く異なる新しいタイプの多焦点IOLであるMiniWell Ready(ミニウェル・レディ、SIFI MedTech社、イタリア)が注目を集めています。球面収差の原理を利用したレンズ光学構造により、近方視はやや弱いものの、コントラスト感度の低下が一切なく、遠方から中間距離まで連続して鮮明な明視域を保持できるIOLとのこと。分類としてはプログレッシブ型EDOFと呼ばれるようですが、光学的な詳細はまだブラックボックスです。
では、Symfonyとの比較はどうか? コントラスト感度がより良好という術者もあれば、同じという意見もあり…..現状まだよくわかっていないのですが、私的意見としてはさほど変わらないのではないかと…。また、国内承認申請をする予定はないようなので、今後も個人輸入のままとなるでしょう。
Symfonyはすでに国内承認されているため、当然ながら先進医療が適応され、医療保険でのカバーが可能です。一方、MiniWell Readyは完全自費診療なので、臨床的に大きな違いがないのであれば、国内市場拡大は容易でないかもしれません。