今週はレーシック〜翼状片切除術〜眼瞼内反手術〜水晶体再建術(二焦点・三焦点を含む)。
すべて経過良好です!
本日はROCK(Rhoキナーゼ)inhibitorについて。
数ある抗緑内障点眼薬のなかでも、ROCK阻害薬であるリパスジル(商品名グラナテック)は最も新しく、2014年11月に薬価収載されました。世界初の作用機序を有する緑内障・高眼圧症治療薬であり、房水流出の主経路である線維柱帯・シュレム管経路組織のRhoキナーゼを阻害することにより、房水流出を促進することで眼圧を下降させます。眼圧を単剤にて約4mmHg、追加投与にて約2mmHg程低下させるとのこと。まだ未知の部分もある薬ですが、私も治験に参加していた経緯があり、今後どのような位置づけになるか期待しているところです。
ROCK阻害剤の1つであるY-27632(実験室レベルでの試薬)は角膜内皮細胞の増殖と接着を促進しアポトーシス(細胞死)を抑制することが数年前に報告されていますが、リパスジルにも同様の効果があることが最近明らかとなりました。
角膜内皮細胞の役割は角膜の透明性を維持することにあります。角膜内皮細胞は加齢とともに減少し、自ずと増殖することはありません。遺伝・外傷・手術など種々の原因により内皮細胞が著しく減少すると、角膜は浮腫や混濁をきたします(水疱性角膜症)。これまでの水疱性角膜症の一般的治療は角膜移植のみですが、ROCK阻害剤の登場により、定石が覆されようとしています。
水疱性角膜症に対する新しい治療法は、培養角膜内皮細胞をROCK阻害薬とともに前房内注入し、術後数時間うつ向き姿勢を行うだけ。報告では0.04から1.0に回復した症例もあり、合併症はないとのこと。本人のiPS細胞から内皮細胞を作成すれば拒絶反応も皆無となるはずです。まだ限られた施設で実験的に行われている治療法ですが、いずれメジャーになるものと確信しています。
リパスジルは試薬ではなく、すでに市販されている抗緑内障点眼薬です。水疱性角膜症ではないものの角膜内皮が高度に減少している症例などには継続点眼が有効かも?…前房内注入ではなく点眼となると効果はかなり減弱すると考えられ、また現時点では長期データが存在せず、実際の有効性は全く不明です。しかし、微力ながらも「継続は力なり」と思われ、永続的点眼は有用であろうと個人的には期待しています。
水疱性角膜症に角膜移植?そんな時代もあったねえ〜…近未来からそんな声が聞こえてきそうです。
佐藤正樹 眼科 つくば ICL
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