眼精疲労と網膜剥離

最近、手術が必要な網膜剥離症例がポツポツと受診されます。

もう数年前になりますが,「鍼治療後に急に見えなくなった」との訴えの症例を経験したことがあります。眼精疲労に対し、まつげの外側付近に鍼治療を行われたとのこと。初診時は上方網膜に怪しい裂孔様のものが2カ所認められましたが,出血で詳細は不明。エコーで網膜剥離はなさそうなので4日後に再診すると,出血はかなり吸収され視力も回復。上方網膜にはやはり2カ所の裂孔が判明し,一方の網膜裂孔内には脈絡膜欠損部が…まさか!鍼による二重穿孔…?…幸いにも眼内炎の併発はなく,裂孔周囲に光凝固を施行するだけで、手術をせずに事なきを得ました。

鍼と眼精疲労についてネット検索してみると,その世界ではどうやら一般的なようです。肩凝りもどきと考えると,効きそうな気もしないでもありませんが。。。さらに鍼と網膜裂孔についてざっと調べてみると,過去の報告例ははっきりしません。むしろ「網膜剥離が鍼で治る!」というような甘い文句を謳ったサイトがあまりにも多く,また同様に懐疑的な内容の文献が医学中央雑誌でもヒットします。これには驚きを隠せません。
電動マッサージ器による外傷性白内障などのように,使い方を間違えると大変な事になる「物」であふれている現在,何が良くて何が悪いのか,すべて自己責任の下で本質を見抜く資質が要求される時代といえるのかもしれません。
でも、網膜剥離は鍼で治り…ませんね。現代西洋医学における周知の事実として、手術にて根治が可能です。

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