今週は,ICL近視矯正手術×4〜レーシック〜水晶体再建術(両眼同日を含む)〜翼状片切除術〜出張手術(笠間眼科)。
皆さん経過良好です。
昨日は,①PrismGuide IRD パネルシステムの保険収載,および②ルクスターナ治療の実際,に関するweb講演会にてお勉強。
①PrismGuide IRD パネルシステム(シスメックス):
遺伝性網膜ジストロフィ(IRD:Inherited Retinal Dystrophy)に対する遺伝子検査がいよいよ保険適応となりますが,対象は,以下の特徴的な臨床所見を有する「RPE65 遺伝子変異によるIRDが疑われる症例のみ」に厳しく規制されています。
A. 常染色体潜性(弧発を含む)の遺伝形式が疑われる
B. 学童期までに発症した重度の夜盲,および視力低下
C. 全視野網膜電図の低下または消失
予定検査施設数は10 施設程度(想定年間検査数は200 件程度)とかなり少なく,検査施設の基準のうち,なかでも「遺伝学的検査の対象となる疾患についての診療実績を有する」とあるので,茨城県内では難しいかもしれませんね。
保険適応はあくまでRPE65遺伝子異常が疑われる重症例のみですが,このパネルシステムはIRDの代表的な82種の遺伝子すべてを同時に検査できるので,RPE65以外の遺伝子変異が見つかる可能性もあります。
実は私,昔〜昔〜レジデントの頃,IRDの遺伝子変異を調べていた時期があり,この82種のうちのRS1とRDH5遺伝子の新規変異について,それぞれ海外雑誌にて英語論文を書いています。その他の複数の遺伝子に関しても実験しましたが,当時はダイレクトシークエンス法が全盛でしたので,遺伝子が大きすぎると非常に手間がかかり,さらには変異が見つからず……ということもしばしば。今は次世代シークエンサーを用いて網羅的に検査できますから,すごいですよね〜。
②ルクスターナ(ノバルティスファーマ):
RPE65網膜ジストロフィは,強い夜盲・網膜形態の温存(色素沈着なし)・自発蛍光の消失・ERGの低下を認め,構造と機能の乖離が発見の鍵。乳児期から何らかの症状を訴えることも少なくなく,約半数が成人までに社会的失明に至ります。
そして,眼科領域では初の遺伝子治療薬となるルクスターナ注(一般名:ボレチゲン ネパルボベク)が,この「両アレル性RPE65 遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィ」に対する治療薬として国内承認されました。
1997年にヒトでRPE65変異が発見され,すぐにルクスターナは開発されたようです。2007年に海外第 Ⅰ 相試験,2012年に海外第 Ⅲ 相試験が開始され,2017年にFDA承認,2018年にEU承認。2020年に国内第 Ⅲ 相試験が開始され,2023年にPMDA承認。
RPE65遺伝子を搭載した組換えアデノウイルスベクター薬で,各眼の網膜下に単回投与(再投与なし)。網膜色素上皮細胞に感染することにより,RPE65遺伝子が長期間安定して発現し,RPE65タンパク質により正常な視覚サイクルを回復させることで,視覚機能の改善が期待されます。
気になる薬価は,片眼で1本4,960万円,両眼で2本9,920万円,つまり患者1人当たり1億円弱,まあ予想通りではありますが….。
市販後調査は5年間,目標症例数は15例…..かなり稀なので,薬価が高いのも頷けますね。
まだまだ時間はかかると思われますが,RPE65のみならず,治療の対象となる遺伝子がさらに追加されることが期待されます。