先週は,レーシック〜PTK(帯状角膜変性)〜ICL近視矯正手術〜iStent inject W 挿入術(緑内障)〜水晶体再建術(両眼同日・緑内障発作後を含む)〜眼瞼皮下腫瘍摘出術(アポクリン腺嚢腫)〜結膜囊部分形成術(眼窩脂肪ヘルニア)。
今週は,硝子体茎離断術(裂孔原性網膜全剥離)〜水晶体再建術(両眼同日・LASIK後を含む)。
皆さん経過良好です。
今週末は第60回日本網膜硝子体学会,本日はほぼフルで拝聴しました。
特に面白かったのは,ご高名な眼科医4名による,特別企画「レジェンドからのメッセージ」。
新しい網膜疾患を複数発見し,日本発で命名! 非英語圏の不利を研究力で吹き飛ばし,2021年に米国で最高位を受賞! 大学発での複数の製品化を成し遂げ,旧帝大の総長に!
そしてもう1名。誰も教えてくれなかったため網膜硝子体検査を独学し,海外へも自ら積極的に手術見学に出向き,決して諦めない網膜剥離手術への熱意で日本のトップsurgeonに。尊敬申し上げるこのT先生の講演を特に楽しみにしていましたが,予想通りに大変興味深い内容でした。初期の網膜剥離手術は,術前術後の絶対安静で約1ヵ月の入院を要したとのことで,日帰り手術全盛の現在とは大違い…。40年以上前,米国でのガス注入併用網膜剥離手術は全身麻酔&宙づりで行われていましたが,ご自身もこの術式で執刀されていたんですね〜。
私が研修医成り立ての25年前,T先生はすでに超高名であり,手術機器メーカー経由でライブ手術の動画を入手。今では国内開催が難しいライブ手術ですが,見学しながらコメントを述べる故T教授・故H教授・そしてO先生など,T先生を含めて当時の硝子体手術4天王が集結した贅沢な動画でした。コピーを繰り返したためと思われるVHS特有の低画質でしたが,手術レベルは当時の研修先とは雲泥の差で,その20G-PDR手術動画を何度も何度も見返した記憶があります。
医師2年目での手術見学(PDR・DME・RRD)にて感銘を受け,6年目(再発性PVR×複数例・open skyでの全剥離ROP手術),7年目(PDRの助手)にも見学させて頂きました。当時は勿論のこと現時点でも日本の網膜硝子体手術のトップsurgeonであり,難治再発性PVR症例における最後の砦となっています。
近年,安易に硝子体手術(特に網膜切開)を行う傾向が危惧されています。若年者の裂孔原性網膜剥離手術は強膜バックルが基本であり,可能な限り硝子体手術は避けるべき。硝子体手術が必須のPVRでも,安易に周辺部網膜を切開せず,硝子体手術と強膜バックルを併用すべき。以上が安全かつ有用な基本方針とされます。
3ポート作成での液空気置換下にて,全周および深部子午線バックルを容易に縫着するT先生の技を真似出来る術者はかなり絞られるかもしれませんが,前出の方針には強く賛同します。
今回の講演とは別で,滲出型加齢黄斑変性に対する360°網膜切開併用中心窩移動術がもてはやされた時代がありました。術後にPVRを発症する症例もあり,侵襲が大きすぎて普及せず,抗VEGF薬の登場とともに消え失せた術式の1つです。
本来,安易な網膜切開は避け,必要に迫られて切開する場合には部分バックルもしくは輪状締結を併用すべき。つまり,強膜バックル手術を完全に習得したうえで硝子体手術を行うべきであり,今後の眼科手術教育の大きな課題の1つと言えるでしょう。
その他,今でこそ言える裏話なども拝聴できました。また是非このような機会を設けて頂けるとありがたいですね。
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