月別アーカイブ: 2021年7月

コロナワクチンと角膜移植後拒絶反応

先週は,レーシック×6〜iStent inject 挿入術(緑内障)〜水晶体再建術(連続焦点トーリックを含む)〜出張手術(笠間眼科)。
今週は,ICL近視矯正手術エクスプレス挿入術(落屑緑内障)〜水晶体再建術(IOL脱臼・緑内障術後・連続焦点を含む)〜前後転術(内斜視)〜出張手術(二の宮眼科)。
皆さん経過良好です。

COVID-19の眼症状として当初から結膜炎が指摘されていますが,これは自然治癒するので心配ありません。一方,角膜移植術後においてCOVID-19に伴う拒絶反応の報告がなされ,移植術後症例にてこれを見逃さないことは非常に重要です。
ウイルスに対する免疫応答により移植後拒絶反応が惹起されるということは,ワクチン接種後でも同様な状況が危惧されます。事実,頻度として非常に稀ではあるものの,帯状疱疹ワクチンやインフルエンザワクチン後に角膜移植後拒絶反応を惹起したとの報告があります。

新型コロナワクチンにおいては,mRNAワクチンに伴う角膜移植後拒絶反応の海外報告がすでに3報あり,投薬にて拒絶反応は沈静化し,再移植を要するほど重症には至らなかったとのこと。RNAワクチンの有効性の表れと考えられ,今後もさらに報告数が増えるのは間違いないでしょう。
角膜移植に限らず,全身の臓器移植後の患者さんには同様のリスクがありますが,日本移植学会の現時点でのワクチン接種方針は「臓器移植患者がCOVID-19を発症した場合の予後は不良であるため,予防が重要であることからワクチン接種を推奨」となっています。

サトウ眼科 ホームページ
サトウ眼科 院長(佐藤正樹)ブログ 本日も視界良好!のトップページ

無症状者の前房内コロナウイルス

先々週は,ICL近視矯正手術×4〜水晶体再建術(緑内障エクスプレス術後を含む)〜出張手術(二の宮眼科)。
先週は,レーシック硝子体茎離断術(黄斑前膜)〜水晶体再建術
今週は,硝子体茎離断術(PDR-VH)〜水晶体再建術眼瞼下垂手術〜出張手術(鉾田病院)。
皆さん経過良好です。

マイアミのBascom Palmer眼研究所から発表された興味深い論文があります(AJO5月号)。
コロナ禍の昨年,全身症状なし且つ鼻腔内抗原検査陰性の前眼部手術患者 31 名において,手術開始直後に前房水を採取しreal time RT-PCR にて解析したところ,6 名(19.4%)SARS-CoV-2 viral RNA 陽性が判明。その6名全員が,その後1年間の観察において全くの無症状だったとのこと。
眼内(前房)は特殊な免疫特権(immune privilege)下にあるが故と考えられる,非常に貴重な報告です。

米国内の2020年感染拡大の最中でのデータなので,そのまま本邦には当てはまりません。
また,一般的な白内障手術の切開創幅は2.0〜2.2mm程度であり,手術中に漏れた前房水がエアロゾル化してオペ室内での二次感染リスクが上がるような心配はないものと推察されます。
にしても,無症状者での眼内コロナウイルスRNAの証明は,時節柄インパクト大ですね。
他国での追試報告が期待されます。

サトウ眼科 ホームページ
サトウ眼科 院長(佐藤正樹)ブログ 本日も視界良好!のトップページ