月別アーカイブ: 2023年9月

PrismGuide IRD パネルシステム

今週は,ICL近視矯正手術×4〜レーシック水晶体再建術(両眼同日を含む)〜翼状片切除術〜出張手術(笠間眼科)。
皆さん経過良好です。

昨日は,①PrismGuide IRD パネルシステムの保険収載,および②ルクスターナ治療の実際,に関するweb講演会にてお勉強。

PrismGuide IRD パネルシステム(シスメックス):
遺伝性網膜ジストロフィ(IRD:Inherited Retinal Dystrophy)に対する遺伝子検査がいよいよ保険適応となりますが,対象は,以下の特徴的な臨床所見を有する「RPE65 遺伝子変異によるIRDが疑われる症例のみ」に厳しく規制されています。
A. 常染色体潜性(弧発を含む)の遺伝形式が疑われる
B. 学童期までに発症した重度の夜盲,および視力低下
C. 全視野網膜電図の低下または消失

予定検査施設数は10 施設程度(想定年間検査数は200 件程度)とかなり少なく,検査施設の基準のうち,なかでも「遺伝学的検査の対象となる疾患についての診療実績を有する」とあるので,茨城県内では難しいかもしれませんね。

保険適応はあくまでRPE65遺伝子異常が疑われる重症例のみですが,このパネルシステムはIRDの代表的な82種の遺伝子すべてを同時に検査できるので,RPE65以外の遺伝子変異が見つかる可能性もあります。
実は私,昔〜昔〜レジデントの頃,IRDの遺伝子変異を調べていた時期があり,この82種のうちのRS1とRDH5遺伝子の新規変異について,それぞれ海外雑誌にて英語論文を書いています。その他の複数の遺伝子に関しても実験しましたが,当時はダイレクトシークエンス法が全盛でしたので,遺伝子が大きすぎると非常に手間がかかり,さらには変異が見つからず……ということもしばしば。今は次世代シークエンサーを用いて網羅的に検査できますから,すごいですよね〜。

ルクスターナ(ノバルティスファーマ):
RPE65網膜ジストロフィは,強い夜盲・網膜形態の温存(色素沈着なし)・自発蛍光の消失・ERGの低下を認め,構造と機能の乖離が発見の鍵。乳児期から何らかの症状を訴えることも少なくなく,約半数が成人までに社会的失明に至ります。

そして,眼科領域では初の遺伝子治療薬となるルクスターナ注(一般名:ボレチゲン ネパルボベク)が,この「両アレル性RPE65 遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィ」に対する治療薬として国内承認されました。
1997年にヒトでRPE65変異が発見され,すぐにルクスターナは開発されたようです。2007年に海外第 Ⅰ 相試験,2012年に海外第 Ⅲ 相試験が開始され,2017年にFDA承認,2018年にEU承認。2020年に国内第 Ⅲ 相試験が開始され,2023年にPMDA承認。
RPE65遺伝子を搭載した組換えアデノウイルスベクター薬で,各眼の網膜下に単回投与(再投与なし)。網膜色素上皮細胞に感染することにより,RPE65遺伝子が長期間安定して発現し,RPE65タンパク質により正常な視覚サイクルを回復させることで,視覚機能の改善が期待されます。

気になる薬価は,片眼で1本4,960万円,両眼で2本9,920万円,つまり患者1人当たり1億円弱,まあ予想通りではありますが….。
市販後調査は5年間,目標症例数は15例…..かなり稀なので,薬価が高いのも頷けますね。

まだまだ時間はかかると思われますが,RPE65のみならず,治療の対象となる遺伝子がさらに追加されることが期待されます。

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緑内障学会

先週は,レーシックPTK(顆粒状角膜変性)〜硝子体茎離断術(増殖糖尿病網膜症)〜水晶体再建術(両眼同日・連続焦点トーリックを含む)〜出張手術(鉾田病院)。
今週は,ICL近視矯正手術〜水晶体再建術(両眼同日・連続焦点トーリックを含む)〜眼瞼下垂手術。
皆さん経過良好です。

今週末は第34回日本緑内障学会。
金曜土曜は虎の門ヒルズにてrealで,日曜は自宅からonline liveにて拝聴。

今回のハイライト:
須田記念講演
・アルツハイマー病は第3の糖尿病
・緑内障は第4の糖尿病!
乳酸には神経保護作用あり。
メトホルミン(肝臓で糖新生を阻害)投与 ⇒ 内因性の乳酸 ↑ ⇒ 神経保護
メトホルミン内服中のDM症例では緑内障性視神経症が有意に少ない!

落屑緑内障
・コレステロール代謝に関与するCYP39A1遺伝子のG204E変異 ⇒ 重症化しやすい

マイクロフック流出路再建術(眼内法)
・眼圧下降効果;S-LOT ≒ マイクロフック ≒ iStent
・術前にROCK阻害薬(主経路に作用)使用の症例は,他の薬剤と比較し有意に有効
(主経路を拡げておかないと廃用性萎縮で有用性が低下する!)

マイクロシャント(参天)が今月正式発売:
・講習会受講が必要なライセンス制
・眼圧下降効果;マイクロフック<マイクロシャント<レクトミー
・落屑緑内障では成績不良 ⇒ 決して万能ではなく過度な期待は禁物!

★国産ECP(内視鏡的毛様体光凝固)が承認発売:
・グリーンレーザー対応にて高い汎用性
・内視鏡付き同軸レーザーにて角膜side portから360°施行可能
・ロングチューブシャントが無効な難症例にも有用
・海外では白内障手術とECP(ダイオードレーザー)の同時手術も普通に行われており,今後の国内普及に期待

レクトミーと術前点眼:
・FP作動薬によるPAP(Prostaglandin-associated periorbitopathy;プロスタグランジン関連眼周囲症)が重症であるほど,レクトミー手術成績が低下!
⇒ 将来的にレクトミーが必要そうな症例には,FP作動薬を漫然と使用しない!
・BACによる眼球結膜の慢性的炎症でもレクトミー手術成績が低下!

今回も大変勉強になりました。
レクトミー不成功が予測される場合,積極的にロングチューブシャントが行われる傾向が強くなっているようです。
PAPやBACの悪影響を鑑み,外科的手術の早期介入が推奨される時代が来るかもしれませんね。

緑内障学会は決して派手でなく,機械展示は必要最小限にて質素。
とはいえ,セミナーのお菓子やお弁当はとても美味しい! もう10年以上前,金沢での同学会セミナーの豪華海鮮懐石弁当(サザエのつぼ焼き入り)にとても驚かされた記憶が…笑。
開催地にもよりますが,参加登録者はそれなりの数であるものの,会場に人が少ない学会もあったり…..緑内障学会の会場内は人が多く,毎度のことながら本来あるべき学会の姿だなあ〜と。
来年は姫路での開催 ♪

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