月別アーカイブ: 2024年6月

JSCRS総会@博多

先週は,ICL近視矯正手術×4〜水晶体再建術(両眼同日多焦点を含む)。
今週は,硝子体茎離断術(ERM)〜水晶体再建術(両眼同日多焦点を含む)〜出張手術。
皆さん経過良好です。

今週末は第39回JSCRS学術総会へ出席のため博多へ。
シンポジム日中韓の白内障・屈折矯正手術の現状」の座長,および「Current trends in cataract and refractive surgery in Japan based on the results of the JSCRS clinical survey」の講演を担当しました。

中国・韓国の先生方の講演内容を簡単にご紹介します。

1)中国(Dr. Xiaoying Wang):
・SMILE手術25万件は世界TOP
・ICLも増加傾向。OVDを使用しない「one-step ICL手術」は約1分で完了するため,Wang先生は1日に110眼のICL手術を執刀した経験があるとのこと!

2)韓国(Dr. Jong Suk Song,KSCRS理事長):
・〜2022年;個人医療保険で多焦点IOLがカバーされていたため,70〜80%が多焦点IOL
・2023年〜;保険でカバーされなくなったため,多焦点IOLは20%未満に減少

両眼同日白内障手術(ISBCS)と別日手術(DSBCS)との比較試験(アジア初);
・COVID-19以降,ISBCSが増加(80%が単焦点IOL)。
・特に85歳以上の症例でISBCSが好まれる(日本と同様に付き添いの都合?)。
・術後眼内炎;2020(ISBCSで有意に多い)→2021(有意差なし)
☞両群とも術後1時間のみ閉眼し,その後は術後点眼開始とのこと。とすると2021年に有意差がなくなった理由は?
欧米の大規模比較試験において,同日でも別日でも眼内炎に有意差はないことは立証済みです。
韓国での結果については,私的意見として,単純にいわゆる「ISBCS手技の習熟」が原因かも?

3)韓国(Dr. So-Hyang Chung):
・中国と同様に,韓国でもSMILE手術が増加。
・軽度近視ではphakic IOLが多い。
・日本と異なり,ICL(後房レンズ)のみならず,Artisan/Artiflex前房レンズ;日本では未承認)も比較的用いられている(理由は不明)。

2022年の ESCRS surveyでは,角膜屈折矯正手術におけるメイン手術として,84%がLASIK,12%がSMILE,と報告されています。
欧米と中国・韓国との相違,さらに同じアジア圏であるにもかかわらず日本との差にも驚きですね〜!

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レーシック? or ICL?

先々週は,ICL近視矯正手術〜硝子体茎離断術(ERM)〜水晶体再建術(両眼同日を含む)。
先週は,レーシック水晶体再建術(両眼同日・多焦点トーリックを含む)〜睫毛内反手術(埋没法)。
今週は,ICL近視矯正手術×4〜水晶体再建術(両眼同日・多焦点を含む)〜翼状片切除術×2〜出張手術。

今月末の学会での講演に向け,只今スライド作成の真っ只中…….その一部をご紹介!

まずは,世界全体・日本・中国・韓国・米国における,屈折矯正手術全体におけるICLの占有率

2018年は,いずれの地域においてもICLのシェア率は10%未満。
2023年は,世界全体で年間およそ410万件の屈折矯正手術が行われています。ICLのシェア率は世界全体では15%に増加し,日本ではなんとシェア73%と尋常ではない伸びを示しています。しかし逆を言えば,世界全体では85%(米国においては98%)がLASIK・SMILE・RLEなどICL以外の手術です!
日本では2013年に都内の1施設で術後感染性角膜炎のoutbreakが報告され,消費者庁から注意喚起がなされ、以降エキシマレーザー屈折矯正手術件数は大幅に減少しました。さらに日本人特有の保守的思考も少なからず関与しているとされ,いずれにせよ諸外国とは異なった非常に特殊な状況にあることは間違いありません。

続いて,ICLの地域別販売実績どの地域で多く用いられているのか)。

なんと8割がAPAC(アジア太平洋地域),さらにAPACでの7割が中国(日本は14%),世界全体でみると単純計算で過半数が中国
中国ではSMILEの増加も顕著ですが,人口からこのような統計になるようです。

ICL™(Implantable Collamer Lens)は、数種類あるフェイキックIOLのなかの1つで、STAAR Surgical社が商標登録を持つ製品名です。紛らわしくも同じくICL(ICL™と異なりImplantable Contact Lensの略)と称しながら,実は異なる素材のレンズを挿入されている例も実在するため,注意が必要です(私自身,他院での偽ICL手術後に白内障を併発し,当院でレンズ抜去および白内障手術を行った症例を経験しています)。

角膜屈折矯正手術(レーシック・SMILE)有水晶体眼内レンズ(ICL)は,それぞれ利点・欠点があり,もしも偏った意見で一つの術式のみを勧められたとしたらそれは大きな誤りです。
いずれにせよ,日本の屈折矯正手術の傾向は世界と全く異なるという事実は周知されるべきでしょう。

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