0.01%アトロピン点眼薬のジレンマ

今週はレーシック水晶体再建術(トーリック・二焦点を含む)を施行し、皆さん経過良好です!

以前「有用な近視進行抑制法は?」と「0.01%アトロピン点眼」にて子供の近視進行抑制について書きました。0.01%アトロピン点眼は、海外のデータでは近視の進行を平均60%軽減させるとのことなので、同効果が約30%のオルソケラトロジーと比較するとさらに強い近視進行抑制効果があるのは確かです。国内臨床試験が進行中であるものの、まだ未承認の薬剤です。
二重盲検(プラセボ・実薬のいずれかに無作為に割り振られ、2年間の観察期間終了までどちらなのか不明)、および眼科検査費用は通常の保険診療(患者側負担)とのこと。なかなかエントリーが進まず予定が大分遅れているようですが、その理由は明白でしょうか…

薬価については、1%アトロピンが1本(5mL)150円弱。濃度が低くなるだけのなので、承認後の薬価は非常に安価であることには間違いなく、さらに保険診療での自己負担分のみとなります。保険収載されれば爆発的に処方が増えるでしょうが、製薬会社の収益の観点からは、ほぼボランティアでの参入となるでしょう。
一方、現在の輸入処方の平均価格は1本(5mL)およそ3千円くらいでしょうか。およそ20倍強の薬価であり、そして100%自費です。医師の裁量の下での個人輸入(実務は代理店が行います)、そして自由診療であるため、どうしても高額になってしまいます。

未承認にもかかわらず、最近低濃度アトロピン点眼は有用との認知が広まり、投薬が可能なクリニックが全国的に増えているようです。都内では「マイオピン®の処方は可能ですか?」とのクリニックへの問い合わせが増えているとのこと。やはり対象が学童だからでしょうね。子供のこととなると少々高額でも何とかしてあげたいと思うのが親の常ですが、ママとも連絡網も大きく貢献しているはずです(^^;)。

国内臨床試験はまだ症例エントリー中ですから、仮に良い結果が出たとしても、承認までには数年を要します。このまま保険収載を待っていると、未承認点眼薬が世にあふれ、収拾がつかなくなりかねません。
かといって安全性を蔑ろには出来ません。健康な学童に対する副交感神経遮断薬の処方ですから、何か起きてからでは大事です。投薬には非常にナーバスとなって然るべきです。
古いけど新しい、有効性と経済性、安全性と承認スピード、色々と悩ましい点眼薬です。
佐藤正樹 眼科 つくば ICL
サトウ眼科 ホームページ
サトウ眼科 ブログ 本日も視界良好!のトップページ

開院3周年

今週火曜の夜は研究学園医療懇話会の座長。
水曜は硝子体茎離断術(増殖糖尿病網膜症症例、黄斑前膜症例)〜水晶体再建術
昨日金曜は水晶体再建術二焦点を含む)〜瞳孔形成術
ちょっぴり疲れ気味ですが、皆さん経過良好でなによりです。

本日は土浦の花火の日!%e5%9c%9f%e6%b5%a6%e8%8a%b1%e7%81%ab
ビルの屋上にて、肌寒くブルブルと震えながらの見物…。
それよりなにより、本日は開院3周年記念日!
昨日9月末で、診察券番号22814を発行しました。つまり3年間でカルテが2万2千冊以上になったわけです。電子カルテなのでどんなに増えても場所には困りませんが…(^^;)。

来週も手術が盛り沢山。これからも引き続き、三焦点プレミアム白内障手術硝子体手術レーシックICL手術緑内障手術眼瞼下垂手術斜視手術抗VEGF療法オルソケラトロジーなどなど、最先端かつ最良のテーラーメイド医療を提供し続けます!
佐藤正樹 眼科 レーシック ICL 
サトウ眼科 ホームページ
サトウ眼科 ブログ 本日も視界良好!のトップページ

MIGS角逐

今週はレーシック水晶体再建術三焦点を含む)を施行し、皆さん経過良好です!

この連休は第27回日本緑内障学会総会にてパシフィコ横浜へ。
MIGSに関する講演はさほど多くなく、昨年と状況は大きく変わっていない印象を受けました。iStentは国内でも認可されたものの、保険適応には大きな縛りがあります。
①白内障手術との同時手術。
②保険適応は1個のみ(2個以上留置する場合はクリニック側の持ちだし)。
どの学会が主導しているのかはっきりしないのですが…白内障との同時手術に限定されているので、主導は緑内障学会?JSCRS?あるいは日眼? 緑内障学会とJSCRSとが一緒に主導するのが本来の姿かと…。

米国では、
XEN Gel Stent (Aquesys社→アラガン社が買収)
InnFocus Microshunt (InnFocus社→参天製薬が買収)
Cypass Micro-Stent (Transcend Medical社→アルコン社が買収)
など、MIGS専用の様々なdeviceの臨床試験が行われています。また、Glaukos社は iStentに加えiStent Supraも臨床試験中です。まだFDAの承認は得られていませんが、脈絡膜上腔へと房水を導く点ではCypassとほぼ同様であり、今後が期待されます。
主要メーカーによる企業買収(例えば参天製薬はInnFocus社を240億円で買収)からもMIGSへの市場の期待の高さが窺えますが、これらのすべてが生き残るとは考えにくく、今後熾烈な争いとなるのは必至です。

3連休の中日にもかかわらず非常に多くの参加者でした。プログラムは3日間みっちりと…最終日のお昼はフェアウェルセミナーの場合が多いのですが、12時〜最終シンポジウムとは恐れ入りました。緑内障学会は少し地味な印象がありますが、これが本来あるべき学会の姿なのでしょうね。
佐藤正樹 眼科 つくば レーシック ICL 硝子体手術 白内障 緑内障 オルソケラトロジー
サトウ眼科 ホームページ
サトウ眼科 ブログ 本日も視界良好!のトップページ

EVO+ Visian ICL

本日2016/9/1に、従来のICLと比較し光学部がより大きく再設計されたEVO+ Visian ICLが発売開始となりました。EVO ICL
ICLの利点は、術前と比較し術後にコントラスト感度が上がる、高次収差増大を抑えることによりwave front guided LASIKと比較してもコントラスト感度が良好、入れ替えなどの再手術が容易、などです。
さらにEVO+ Visian ICLは有効光学部が大きくなっているため、瞳孔径の大きな症例(特に若年者)において夜間の見え方(グレア・ハロー)が改善されます。まだ度数に限りがあるものの、国内在庫は従来モデルから新モデルEVO+に順次切り替わるので、当院でも今後はEVO+を用いることになります。屈折矯正の分野はどんどん進化しますね〜。

先週末は毎年恒例のまつりつくば。天気予報とは異なりどうにか土砂降りは免れ、相変わらずの人出でした。まつりつくば2016
週明け火曜は定例出張手術(水晶体再建術)。先日水曜は硝子体茎離断術(増殖糖尿病網膜症)〜水晶体再建術。明日金曜はPTK(顆粒状角膜ジストロフィー)〜水晶体再建術の予定。
もうすぐ秋の学会シーズン到来。手術・勉強と頑張ります ♪

サトウ眼科 ホームページ
サトウ眼科 ブログ 本日も視界良好!のトップページ

Emixustat(エミクススタト)

夏期休診明け早々、水曜はレーシック、金曜は水晶体再建術多焦点を含む)〜硝子体茎離断術(特発性黄斑前膜・増殖糖尿病網膜症)。皆さん経過良好でなによりです!

本日は、米国で開発中のEmixustatエミクススタト)という経口内服薬について。
Emixustatは視サイクル(ロドプシン代謝:網膜内で光信号を電気信号に変換する一連の流れ)を制御(モジュレーション)することで有害副産物の産生を抑制するという、全く新しい発想の薬剤です。
視覚サイクルとは….簡潔に述べると、網膜内で物質が代謝され様々な修飾を経てまた最初の物質に戻る…これを永遠に繰り返すことで光を感じ続けられるわけです。ずっと走り続けると筋肉内に乳酸が蓄積するように、ずっと光を感じ続けていると有害副産物が網膜内に蓄積してしまう。であれば、光に対する感度が高い桿体細胞を休ませる(エネルギー消費を抑制する)ことで、視覚サイクルの動きを調整し網膜を保護すればよいのではないか。アキュセラインク社はこのような発想のもと、エミクススタトの開発に至っていました。
網膜のみに作用するため全身の副作用は確認されておらず、また内服薬という扱いやすさが非常に魅力的な薬剤です。現時点では治療法のない萎縮型加齢黄斑変性や糖尿病網膜症などの網膜疾患へも応用が期待されていました….がしかし…臨床第2b/3相試験のトップラインデータが発表され、なんと萎縮型加齢黄斑変性への有用性が確認されなかったとのこと….。これによりアキュセラインク社と大塚製薬との共同開発・販売の契約が終了し、アキュセラインク社の株価は急落。

全く新しい発想の、しかも経口内服薬ということで少し期待していましたが…有用性が確認されないのでは残念ながら仕方ないですね。糖尿病網膜症に対する臨床試験は継続されるとのこと。今後どうなることやら…

サトウ眼科 ホームページ
サトウ眼科 ブログ 本日も視界良好!のトップページ