緑内障」カテゴリーアーカイブ

緑内障の病因は…?

今週はエキシマレーザーおよび水晶体再建術(二焦点・三焦点を含む)。皆さん経過良好です!

Preperimetric glaucoma(PPG)の治療開始時期について知識を深めるべく、今日は緑内障の勉強会に出席しました。
緑内障の責任遺伝子の解析がかなり進んでいるようですが、病因はいまだ明らかではないため、PPGの治療開始に関しては個々の患者さんとの相談で決めるという古典的な治療指針となります。今は昔、OCTによる緑内障診断のブレイクスルーもありましたが、治療のブレイクスルーはもう少し先かもしれません。

初診時の年齢・性別・眼圧・OCT画像解析・視野のいずれもほぼ同様の別々の患者さんに対し、現在の緑内障診療ガイドラインに沿って、それぞれに同じ点眼治療を同じ期間施し、点眼開始後の眼圧もほぼ同じで長期経過。だとしても、数年後に全く異なる視野障害の進行をみることは十分にあり得ます。神はサイコロを振らないはずなので、緑内障の成因に関してまだまだ解明されていない点が多い、ということなのでしょうね。

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緑内障と体位変動

今週は白内障(水晶体再建)手術硝子体手術(硝子体茎離断術)、いずれも経過良好です!

先日、あるバラエティTVの番組担当者から電話があり、その内容は「うつ伏せで寝ると緑内障になるんですか?可能であれば明日の番組収録に参加して頂きたい」というものでした…..。

眼圧は24時間絶えず微妙に変化しており、日内変動の幅に個人差があることは古くから知られています。では日常生活において眼圧を変動させるような因子は?
私がよく患者さんに告げるものとして…..ジョギングなどの運動は眼圧を下げるので推奨!一方ベンチプレスなどは急激な眼圧変動を来すためあまり好ましくない!いずれも緑内障の患者さんにおいての話です。

では、寝る姿勢はどうでしょうか。
健常者において仰臥位での眼圧は座位と比較しやや上昇する
ことは以前から指摘されています。さらに正常眼圧緑内障症例において、仰臥位と座位との眼圧変動幅が大きいほど視野進行が大きいことが数年前に指摘され、このような体位変動に伴う眼圧変化が緑内障分野でのトピックとなっています。
海外からは、健常者において腹臥位(うつ伏せ)でも眼圧はやや上昇し、その上昇幅は仰臥位よりも大きいとの報告もあります。また、側臥位(横向き)の場合、上側の眼の眼圧は仰臥位と同様だが、下側の眼の眼圧は仰臥位よりもやや上昇するとされます。さらに、30度程度上半身を起こした状態(起座位)では、仰臥位よりもやや低下するとの報告もあります。

なにやら非常にややこしいですが、詰まるところ「就寝時の眼圧は、下がることはなく、むしろ上がる」ということです。では眼圧を上げないためには、一体どうやって寝れば良いのでしょうか…..正解は「座ったまま寝る」ということになりますが…..それは全く現実的ではありませんね。いつも必ず同じ体勢で寝る人はいないでしょうし、眼圧は高いけど全く緑内障ではないこともありますので、緑内障でない健常者においては全く気にする必要はないでしょう。

では緑内障症例ではどうでしょうか。高度遠視の浅前房症例の方が、脊椎手術の後でうつ伏せとなり、緑内障発作を起こしたとの報告は散見されます(緑内障発作についてはこちらを参照)。ただしこれは報告に値する特殊例です。
さらに、外来診察時には両眼とも同程度の低眼圧なのに、なぜか右眼だけ視野障害が進行する仮想症例。角膜厚も両眼同程度(角膜厚と眼圧の関係についてはこちらを参照)。生活習慣をよく聴取すると、毎晩右を下にして何十年も寝ていた…..。このような症例が実在する可能性もゼロではないでしょう。
就寝時における仰臥位か腹臥位かの「習慣」による緑内障進行度の差は、現状では全く不明のため、緑内障症例においてうつ伏せが進行を加速させるのか否かは今後検討されるべき事項です。
逆立ちなど奇怪な体勢での就寝を好まれる場合は別ですが、気持ちよく眠ることが健康には一番良いと考えられるため、緑内障症例においても寝る姿勢をあまり気にしすぎる必要はないでしょう。それよりも、毎日欠かさず決められた回数で点眼を継続することがなにより重要といえます。

以上を踏まえ、話を戻します。
うつ伏せで寝ると緑内障になるのか?…..いやいやそんな単純な話ではありません!

少なくとも健常者が、うつ伏せが原因で緑内障になることはないでしょう。
先方は視聴者の興味をできるだけ引きたいのでしょうが、いたずらに誇張して視聴者の不安を煽るのを避けるため、簡単に説明し依頼を辞退しました。企画意図に沿う発言をしてくれそうなDrに手当たり次第に電話がかけられ、私はそのうちの一人だったのかもしれません(^^;)。

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InnFocus Microshunt

先週末は名古屋で開催された第26回日本緑内障学会に出席しました。緑内障学会も徐々に規模が大きくなりつつあるようで、会場内は非常に多くの来場者で賑わっていました。
最先端の内容を取り入れるべく、最近はなるべく専門別の学会に参加するように心かげています。水晶体・眼内レンズ・屈折矯正関連は6月のJSCRS総会、緑内障は9月の緑内障学会総会、網膜関連は12月の網膜硝子体学会総会、といった感じです。それぞれ特化した専門学会ですから、内容のレベルは高く、非常に勉強になります。

以前も触れましたが、shunt deviceを用いたMIGSmicro-invasive glaucoma surgery)は緑内障手術の主流となりつつあります。 特にiStentをはじめとした流出路再建術は、著しい高眼圧症例にはあまり有効ではありませんが、その低侵襲・手術の簡便さゆえに本邦での認可が期待されています。image01
今回の学会で、InnFocus Microshuntに関する発表は話題の1つでしょう。これもshunt deviceの1つですが、流出路再建でなく、通常の濾過手術の延長線上にあるものです。iStentほどの簡便さはありませんが、強膜flapを作成しないという大きなメリットがあります。2012年にCEマークを取得、FDAではphase Ⅰ trial中。日本ではもちろん未承認ですが、国内でも10例を目標にこのdeviceのpilot studyが行われているそうです。結果としては、術後半年で追加手術の必要な症例が出ており、その原因はやはり内腔閉塞。評価を下すのにはまだ時期尚早のようなので、今後の長期経過報告が期待されます。

本日午後はオペ。シルバーウィーク前のため、控えめに白内障手術(水晶体再建術)のみ6件。
連休明けの24(木)25(金)は、レーシック眼瞼下垂手術白内障手術(水晶体再建)硝子体手術(硝子体茎離断)と盛り沢山です!

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秋の学会シーズン

先週はレーシック白内障手術(水晶体再建術)硝子体手術(硝子体茎離断術)を施行し、みなさん経過良好です!今週末は学会出席のため内眼手術を制限し、レーシック眼瞼下垂手術と控えめです。
HOYA社に新しい硝子体鉗子のデモンストレーションを依頼され、特発性黄斑前膜の硝子体手術で実際に試用しました。
ERM剥離 ILM剥離

まず黄斑前膜(網膜前膜)を網膜から剥がします。さらに内境界膜(ILM)を剥がすことにより、黄斑前膜の再発を予防できます。非常に使いやすい鉗子でスムーズに手術終了!
実際の手術動画は、10月に開催される第69回日本臨床眼科学会にて放映予定です。

本日は火曜休診日にて、いつもの如く午後から出張手術へ。そして夜はホテルベストランドでの「研究学園医療懇話会」にて、「全身疾患と続発性緑内障」と題した依頼講演を行ってきました。他科の先生方の予想外の食い付き…いやはや質問の多さに驚きです(^^;)。

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トリガーフィッシュ(スマートコンタクト)認証取り下げ?

さて,本日は再度スマートコンタクトに関して。
トリガーフィッシュ1昨年8月に「医療用スマートレンズ」についてご紹介しましたが,7/10付けで早くもその第一弾が国内で承認されました!AlconでもGoogleでもなく,大手コンタクトメーカーのシードです。
スイスの医療機器メーカーSENSIMED社が製造する24時間角膜曲率変動モニター機器「トリガーフィッシュ」システムは,2010年に欧州でCEマークを取得済みです。これを国内ではシードが販売することになりますが,その前段階で医療器具としての承認を得たわけです。トリガーフィッシュ2
コンタクトレンズに内蔵されたICtip内臓センサーにて、眼圧の変化から誘発される角膜曲率の動きを24時間モニター可能であり,アンテナとデータケーブル、レコーダーで構成される受信機を利用するとのことです。

眼圧には誰しも「日内変動」があり,特に進行性の緑内障の患者さんにとってはそれを把握できることは非常に有益です。1泊入院して深夜に2時間毎に眼圧を測定する,という作業を行っていた時代もありましたが,実際には患者・医療サイドの双方にとってかなりの負担となり,患者全員に行う事は非現実的です。このシステムにより24時間自動モニターによる観察が可能となれば,どれだけ有益かは考えるまでもありませんね。今後早急に臨床で使用できることが期待されます。

ところが…喜びも束の間…7/18付けで,シードはこの国内認証を取り下げたとのこと。何か重大な不具合が見つかったのでしょうか…とても残念です。

いずれにせよ,当然ながらこのレンズには屈折矯正機能はなく,以前に紹介した血糖測定と同様に生体モニタリングのみですが,老眼克服の屈折矯正機能を有したコンタクトレンズの登場が待たれます。

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