緑内障」カテゴリーアーカイブ

角膜厚と眼圧

本日は角膜厚と眼圧の関連について。

眼圧は緑内障の診断および経過観察には必須の検査項目です。眼圧は測定するたびに微妙に変化し、また日内変動や体位変動などもあります。
さらに見かけ上の眼圧測定値は、角膜生体力学的特性によって大きく左右されます。端的に言うと、角膜が厚ければ眼圧は高く評価され、角膜が薄ければ眼圧は低く評価されることになります。個々の角膜厚による眼圧補正式も存在しますが、これまで広く普及するには至っていませんでした。
しかしながら、角膜厚による眼圧補正の重要性の認識が徐々に高まり、最近では実測値と補正眼圧値の双方を表示する眼圧計も登場しています。
下記に角膜厚と補正眼圧のおよその相関を示します。
IOPとCCT

LASIKなどの屈折矯正術後に眼圧が過少評価されることは以前より指摘されていました。例えば、LASIK術後中心角膜厚が420umの患者さんの眼圧測定値が9mmHgの場合、補正は+6で補正眼圧はおよそ15mmHgということになります。
次に、実測眼圧値がいつも10mmHg程度と良好にもかかわらず視野欠損が進行する正常眼圧緑内障の仮想症例。角膜厚を計測してみると400umと薄く、補正眼圧はおよそ17mmHg。とすると実はもっと眼圧を下げるように点眼薬を工夫しなければならない症例、ということになります。
さらに、人間ドックで毎回「要精査」を指摘され、実測眼圧値がいつも25mmHg程度の高眼圧仮想症例。しかし視神経乳頭に緑内障性異常を認めず。角膜厚を計測してみると660umと厚く、補正眼圧はおよそ19mmHg。とすると眼圧は正常上限であり、視神経乳頭に全く異常を認めないのであれば、そのまま経過観察で問題ない症例、ということになります。
いずれも極端な仮想ではありますが、実際に起こりえると考えられるので、角膜厚がいかに重要かがわかりますね。

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緑内障発作予防としての白内障手術

今週は4日連続手術。内容も外眼・緑内障濾過手術レーシック白内障手術と多岐にわたりちょっと疲れましたが、皆さん術後経過良好で何よりです!

さて本日は、緑内障発作の治療について。
角膜裏面と水晶体前面の空間を「前房」といいますが、この前房の深さにはかなりの個人差があります。一般に、近視が強い場合は深く、遠視が強い場合は浅い傾向があります。元々前房が浅い(隅角が狭い)方が、感情的ストレス・低照明下での近見作業・服薬などにて軽度の散瞳状態となり、眼圧が急激に上昇する場合(急性緑内障発作)があります。スライド1

発作を起こすと、激しい眼痛・頭痛・視力低下・吐き気・嘔吐などの症状を呈し、夜間救急外来を受診するケースもよく見受けられます。受診せずにそのまま放置すると、永続的な視力障害を呈する場合も少なくありません。

スライド2

緑内障発作が明らかな場合、すぐに眼圧を下げるために、投薬を併用しつつ非観血的レーザー虹彩切開術を早急に施行します。
片眼に発作を起こした場合、非発作のもう片眼(僚眼)は発作予防のために同レーザー施術を施します。

スライド3

 

近年では、このレーザー施術の代わりに、少なくとも非発作眼では、白内障手術(水晶体再建術)を第一選択とすることも一般的になりつつあります。厚い水晶体を薄い眼内レンズに交換することで前房が深くなり、発作が解除あるいは予防可能となります。
将来的な白内障手術の時期を早めることで緑内障発作も予防可能となるため、まさに一石二鳥といえるでしょう。

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iStent

昨夜は「緑内障の臨床(一般検査〜MIGSまで)」と題した依頼講演を行ってきました。そのなかでも少し触れましたが、shunt deviceを用いたMIGSmicro-invasive glaucoma surgery)は今後の緑内障手術の主流となり得るものです。2014年のASCRS Binkhorst lecture(栄誉ある指名講演)は、カナダのIke K. Ahmed先生によるMIGSに関する講演であり、その注目の高さがうかがえます。Ex-PRESS
日本で認可が得られているdeviceとしては、Ex-PRESSTrabectomeがあります。特にEx-PRESSは、虹彩切除に伴う出血や術中/術後早期の低眼圧を防止する目的として非常に有用なdeviceです。2002年にFDAで承認され、本邦では2012年に厚労省で認可されましたが、米国とは実に10年の較差があります。
供覧の画像は、開放隅角緑内障と黄斑前膜の合併症例に対して私が執刀した硝子体手術Ex-PRESS挿入の同時手術の術中所見です。術後2年以上経ちますが、眼圧/眼底ともに経過は非常に良好です。

欧米ではさらに多くのshunt deviceが存在します。パッと出てはすぐに消えるものも多く存在しますが、Microcatheterを補助的に用いてシュレム管を拡大させるCanaloplasty、脈絡膜上腔へ挿入しuveoscleral flowを増加させる純金製のGold Shuntやポリイミド製のCyPass、そしてシュレム管に挿入するチタン製のiStentなどが今後期待されるdeviceといえます。

iStentiSyent2

 

特に注目すべきはこのiStent。全長が約1mmという世界最小のshunt deviceであり、injectorに最初からpreloadされているため、リリースも容易です。複数個の挿入も可能であり、挿入数に比例した眼圧下降効果が得られます。2012年にFDAでの承認を得ており、非常にsimpleな手術操作が高く評価され、今後world wideで使用されることは確実です。
ただし、Ex-PRESSにおけるFDAと厚労省承認との差を考慮すると、iStentを国内で使用できるのは最短でも数年先でしょうか…できるだけ早急な国内承認が期待されます。

講演後は順鮨にて懇親会。とっても美味しくお勧めのお寿司屋さんです。
先週・今週は、斜視手術レーシック白内障手術眼瞼下垂手術。頑張ります!

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iPS細胞から網膜神経節細胞

昨日19時、日本発の素晴らしい論文がScientific Reports(Nature Publishing Group)オンライン版で発表されました。
国立成育医療研究センター眼科の研究チームが、ヒトiPS細胞から、神経線維をもつ網膜神経節細胞(視神経細胞)を作製することに、世界で初めて成功したとのこと!
これまで神経線維をもつヒト視神経細胞を培養すること自体が不可能でしたが、論文によるとこのヒト視神経細胞は1~2cmの神経線維を有し、神経としての機能を示す軸索流や電気生理反応が認められたとのことです。
イモリにおける水晶体再生や視神経の一部再生は知られていましたが、ヒト視神経の移植や再生医療の研究はほとんど進んでいませんでした。このヒト視神経細胞を用いることによって、緑内障、視神経炎、遺伝性・外傷性・虚血性視神経症などにおける、病態解明・再生医療・創薬が進むことが期待されます。
真の研究とはこうあるべき、というまさにお手本ですね。しかも日本発!久々に感動を覚える論文です。

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はんなりと

週末に学会出席予定だったため、内眼手術は控えめとし、レーシック緑内障手術を。皆さん非常に経過良好のため、安心して第38回眼科手術学会総会に出席できました。会期中ず〜っと雪がぱらぱらと…やはりこの時期の京都は寒いですね。

興味深いものとして、新眼内レンズに関するセミナーがありました。現状の眼内レンズは移植後何十年も視覚の質を保持できますが、臨床的には問題とならない程度の材質的経年劣化はやはり避けられません。
4月に発売される純国産のこの眼内レンズ(vivinex)は、表面を特殊コーティングすることで材質の経年劣化を大幅に軽減し、後発白内障もほぼ完璧に抑制可能とのことです。
この眼内レンズの研究をスタートしたのは実は10年前とのこと。まさに継続は力なり!

手術学会学会ではコングレスバックが必ず配布されるのですが、今回は餃子型ポーチが付いたバックでした。裏にはutsunomiyagyozaの文字が…主催が獨協医大だからでしょうが…..なぜ京都で開催?

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